飛行機での移動は、今や旅や出張に欠かせない交通手段です。
その一方で、どれほど技術が発達しても「空の安全を願う気持ち」は変わりません。
今回紹介するのは、関西の大阪・奈良・京都に点在する「航空安全を司る三つの神社」。
空飛ぶ神・饒速日命と「天磐船」の伝説
三社の中心に祀られるのは、櫛玉饒速日命(くしたまにぎはやひのみこと)。
『日本書紀』によれば、彼は「天磐船(あめのいわふね)」という空飛ぶ船に乗って天から降臨したと伝えられています。

古代の人々にとって理解を超えた「空を飛ぶ」存在は、現代の私たちにとってまさに航空機そのもの。
この神話が、「饒速日命=航空安全の守護神」として信仰される基盤となりました。
奈良|航空信仰の原点「矢田坐久志玉比古神社(矢落神社)」
奈良県大和郡山市にあるこの神社は、饒速日命が放った矢が落ちた地と伝えられることから「矢落神社」とも呼ばれます。
古くからこの地は、神が降り立った「本拠地」とされ、昭和初期には正式に「航空祖神」として国に認定されました。

楼門には「航空祖神」の扁額が掲げられ、境内には旧日本陸軍・九一式戦闘機の木製プロペラが奉納。
古代の神話と近代航空の歴史が、ひとつの空の祈りとして重なっています。

毎年9月20日前後には「航空祭」も開催。航空関係者や飛行機ファンが全国から参拝に訪れる、まさに「空の聖地」です。
アクセス:近鉄郡山駅からバスで「横山口」下車、徒歩約6分。
拝観料:無料。
大阪|関西空港の守護神「泉州磐船神社(航空神社)」
大阪府泉佐野市にある泉州磐船神社は、関西国際空港の開港を前に1983年に建立されました。
交野市の磐船神社から饒速日命を御分霊して祀り、関空の安全運航と旅人の無事を見守っています。

この神社が人気を集める理由のひとつが、「落ちない神様」。
「飛行機が落ちない」=「試験に落ちない」という発想から、航空安全だけでなく、受験合格祈願の神様としても有名です。

境内では、鳥居に取り付けられたプロペラや、実物のヘリコプターが参拝者を出迎えます。
古代と現代の「飛行」が融合した、フォトジェニックな空間です。
アクセス:JR熊取駅から徒歩約11分。
拝観時間:9:00~17:00(無料)。
京都|神話と科学の交差点「飛行神社」
京都府八幡市に鎮座する飛行神社は、日本の航空機の父・二宮忠八翁が自ら創建した神社です。
彼は日本初の飛行原理を発明した人物であり、航空殉難者の慰霊と航空安全を願ってこの地を拓きました。

ここでは、饒速日命と航空殉難者の英霊がともに祀られ、古代神話と現代科学が共存する神聖な空間を形成しています。

境内には資料館が併設され、二宮忠八翁ゆかりの品々や、寄贈された1000機の飛行機模型を展示。
飛行機に関するグッズや、飛行御籤など飛行機ファンにとってはマストな神社。
アクセス:京阪本線「石清水八幡宮駅」から徒歩5分。
拝観時間:9:00〜16:30(資料館入館料:300円)。
空の三社巡り:旅人に贈る「心の翼」
関西の三つの航空安全神社は、
古代神話、近代航空、そして現代の旅を繋ぐ「時空を超えた信仰」です。
奈良では「航空信仰の起源」に触れ、大阪では「落ちない神様」に成功を祈り、京都では「科学と鎮魂」に思いを馳せる。
それは、単なる参拝ではなく「日本の空の歴史を巡る巡礼」でもあります。
次のフライトを控えている人も、受験や挑戦を前にしている人も、この三社で祈りを捧げてみてはどうでしょうか。
古代に空を飛んだ饒速日命が、きっとあなたの旅路を、そして「落ちない未来」を守ってくれるはずです。
関西・航空安全三社まとめ
| 神社名 | 所在地 | 特徴 | 見どころ |
|---|---|---|---|
| 矢田坐久志玉比古神社(矢落神社) | 奈良県大和郡山 | 航空祖神の起源 | 九一式戦闘機プロペラ、航空祭 |
| 泉州磐船神社 | 大阪府泉佐野 | 関空守護・落ちない神様 | プロペラ鳥居、ヘリ展示 |
| 飛行神社 | 京都府八幡市 | 科学と鎮魂の融合 | 飛行みくじ、資料館 |



