イブラヒムピースハウス

パレスチナの平和活動家であるハジ・イブラヒム・アブ・エル=ハワ氏、旅人の間では「イブラヒムじいさん」と呼ばれる彼と、彼の無償の家「ピースハウス」を紹介します。

イブラヒムじいさんに偶然出会う

2019年の年末、エルサレム旧市街を抜けオリーブ山を歩いていると、突然笑顔で声を掛けられました。その声をかけてきた人がイブラヒムじいさんで、私と近くにいたイタリア人旅行者と一緒に家に誘われ手料理をごちそうになりました。

オリーブ山で会ったイブラヒムじいさん
オリーブ山で出会った瞬間

しかし、当時の私は、彼の家が寄付で運営されていることを知らず、感謝の気持ちだけを伝えて立ち去ってしまいました。次こそはきちんと、彼を支える助けになりたい。でも、あの優しかったイブラヒムじいさんは、今も元気にされているのだろうか。

オリーブ山で出会った「平和の使者」

イブラヒムじいさんの家、通称「イブラヒムピースハウス」は、エルサレムの旧市街を一望するオリーブ山にあります 。オリーブ山にはユダヤ人の墓、マリア永眠教会、そしてアラブ系の住人たちが多く住む、旧市街と同様に色々重なり合っている場所です。  

後ろ姿がかわいいイブラヒムじいさん
後ろ姿がかわいいイブラヒムじいさん

イブラヒムじいさんの家は、宿泊客の寄付のみで運営されており、宿代を徴収しないため、ゲストハウスではなく「ハウス」と呼ばれています 。ベッドや洗濯機、インターネットなどの設備が自由に使えるだけでなく、何より彼自身が作る手料理が振る舞われます 。  

イブラヒムピースハウス
おうちにお邪魔する

彼の口癖は「Welcome!」、そして「 EAT!!」。パレスチナのダライ・ラマやマザー・テレサ のようだと言われる彼の行動は、食という最も根源的な行為を通じて、人々の中に横たわる分断を壊そうとする、強い哲学に裏打ちされています 。  

ピースハウスの起源:1967年戦争後の「平和の家」

ピースハウスの歴史は、イブラヒムじいさんの祖父に遡る。1967年の六日戦争でイスラエルが東エルサレムを占領した後、彼の祖父が家族の家をアラビア語で「ベイト・アッサラーム(平和の家)」と名付け、旅人に無償で開放したのが始まりです 。  

イブラヒムピースハウス
イブラヒムピースハウスに飾られてる写真や資料

イブラヒムじいさん(ハジ・イブラヒム・アブ・エル=ハワ氏)は、その遺産を受け継いだパレスチナ人です。彼は1942年生まれで、彼の家族は7世紀から1400年もの間、オリーブ山に住み続けてきたベドウィンの家系です 。彼は、イスラエルの通信会社で27年間勤務した経験を持ちながら 、30年以上にわたり、イスラエル人とパレスチナ人の間で平和と和解の活動に尽力してきた「善意の大使」なのです 。  

「崇高な精神」をどう守るか

私のように、イブラヒムじいさんの厚意に甘え、寄付をせずに去ってしまう旅人は少なくないようです 。彼が宿泊客のために購入した食べ物や日用品の費用は、ピースハウスに置かれた寄付用のポストに入れられた収入に依存しています 。  

イブラヒムじいさんの手料理
イブラヒムじいさんの手料理

聞いたところによると、彼は期待して何度もポストをチェックするものの、中身が空で肩を落とすことがよくあるそうです 。イブラヒムじいさんは決して「払え」とは言いません。それでも「Welcome!」と「EAT!!」を笑顔で言い続けてきた精神は、あまりにも崇高すぎます。  

イブラヒムピースハウスリビング
リビングでごちそうになった

しかし、イブラヒムじいさんは、現在、極めて深刻な危機に直面しているらしい。

支援団体からの報告による現在の安否

「イブラヒムじいさんの安否」について、健康と経済状態は厳しい状況に置かれていることが、国際的な人権団体や支援者からの報告で確認されています。

  1. 巨額の罰金と投獄の危機
    自宅を増築しようとしたところ、「無許可建築」とされ、巨額の罰金の支払いが課されました。
    支払いが滞れば、自宅の強制解体に加えて最長3年の投獄があり得ます。クラウドファンディングで一時的に拘束は避けられたものの、月々の支払いは今も重くのしかかっています。  
  2. 健康状態の悪化
    長引く裁判は彼の体を蝕み、法廷では脳卒中を起こしてそのまま病院へ。
    現在も海外渡航は禁止されたままです。
  3. 薬代にも事欠く窮状
    寄付だけでは生活が成り立たず、最近では薬代にも困るほどの深刻な経済状態に。  

それでもイブラヒムじいさんは、旅人のために新しい部屋を作ろうとしている、そんな話が伝わってくるほど、変わらないホスピタリティを持ち続けています。

また会えるかな

イブラヒムじいさんの笑顔の裏には、東エルサレムのパレスチナ人が日常的に直面している、ちょっと理不尽で、どうにもならない法律や仕組みとの厳しい戦いがあります。

見送るイブラヒムじいさん
私を見送るイブラヒムじいさん

それでも、イブラヒムじいさんが私たちを温かく迎え入れてくれるのは、金銭的な見返りを求めているからではありません。その歓迎の行為そのものが、「国も、宗教も、人種も関係なく、みんなが仲良く暮らせる世界」を願う、生き方そのものなのです。

イブラヒムじいさんのようなイスラエル領内に住むアラブ系住民についての記事はコチラ!

リール動画はコチラ

投稿者 iryota_gram

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