エルサレム岩のドーム

エルサレムのスカイラインを彩る黄金の輝き、「岩のドーム」。イスラム教、ユダヤ教、キリスト教が交錯するこの地で、最も美しく、そして最も訪れるのが難しい場所の一つです。

エルサレム滞在5日目にしてようやく足を踏み入れることができた実体験と、現地の最新調査に基づいた詳細な情報を合体させ、この聖域の魅力を余すところなくお伝えします。

5日目の挑戦:ついに開かれた「モロッコ門」への道

「岩のドーム」がある「神殿の丘(アル=ハラム・アッ=シャリーフ)」への入場は、一筋縄ではいきません。数日間、何度か試みましたが、モロッコ門手前のスロープが閉鎖されていたり、警護の兵士から嘘の情報を伝えられたりと、立ち入ることができない日々が続きました。

神殿の丘出口の門
出口の門にいるイスラエル兵と警察

ようやく入場できたのは火曜日の朝8時。この場所は礼拝などの宗教行事や、イスラエル政府の判断によって突如として入場が禁止されることが多いため、訪問には忍耐と運が必要です。   

エルサレムモロッコ門へ続くスロープ
モロッコ門へつづくスロープ

スロープから望む「嘆きの壁」と旧市街

非ムスリムが神殿の丘に入る唯一の入り口が、嘆きの壁広場の南側にある木製スロープ(モロッコ門)です。ここを通る際、眼下には「嘆きの壁」で祈りを捧げる人々が見え、男女のエリアが厳格に分かれている様子がよく分かります。

エルサレム嘆きの壁
嘆きの壁:奥が男性、手前が女性

特に西を振り返ると、朝日に照らされたエルサレム旧市街が一望でき、その美しさは息を呑むほどです。

エルサレム旧市街ユダヤ教地区
エルサレム旧市街のユダヤ教地区

【参考】神殿の丘・訪問可能時間ガイド

神殿の丘を訪れる際は、時間が非常に限られているため注意が必要です。以下の時間はあくまで目安であり、現地の情勢により予告なく変更・閉鎖されることがあります。

  • 訪問可能な曜日
    日曜日〜木曜日
    (金曜日、土曜日、イスラム教の祝祭日は非ムスリムには閉鎖されます)   
  • 通常時のスケジュール
    • 夏季(4月〜9月)
      午前 7:30 – 11:00 / 午後 13:30 – 14:30    
    • 冬季(10月〜3月)
      午前 7:30 – 10:30 / 午後 12:30 – 13:30    
  • ラマダーン期間(2026年2月18日〜3月19日頃)の特例
    • 2026年のラマダーン期間中は、朝の訪問時間が1時間前倒し・延長され、6:30 – 11:30 となっています。
    • ただし、午後の時間枠は閉鎖されるのが一般的です。
エルサレム神殿の丘セキュリティチェック
スロープに行く為のセキュリティチェック

セキュリティチェックには1時間以上かかることもあるため、特に混雑が予想される時期は早めに並ぶことをおすすめします。

イスラム建築の傑作「岩のドーム」の建築美

神殿の丘の中心に鎮座するのが、黄金に輝く「岩のドーム」です。西暦 691/692 年にウマイヤ朝のカリフ、アブド・アル=マリクによって建立された、現存する最古のイスラム建築遺構の一つです。   

イスラム教第三の聖地岩のドーム
イスラム教第三の聖地岩のドーム

幾何学的な完璧さと装飾

岩のドーム装飾
アラベスク文様とカリグラフィー
  • 構造
    完璧な正八角形のプランに基づいて設計されており、中心に位置する「聖なる岩」を囲む二重の回廊が形成されています。   
  • 黄金のドーム
    直径は約 20.2 メートル。現在はアルミニウム・ブロンズ合金に金箔を施したもので覆われており、遠くからでも圧倒的な存在感を放ちます。   
  • 外壁のタイル
    16世紀のオスマン朝時代、スルタン・スレイマン大帝によって一新された青いタイル装飾が見事です 。繊細なアラベスク模様とクフ体のカリグラフィー(文字)が、植物文様と調和して壁面を美しく彩っています。   
岩のドームカリグラフィー
カリグラフィー

残念ながら、現在、非ムスリムは内部に入ることは一切許可されておらず、外観の見学のみとなります。

アル=アクサー・モスクと敷地内の緊張感

スロープを上って神殿の丘に入ると、まず目に飛び込んでくるのが銀色のドームを持つ「アル=アクサー・モスク(キブリー・モスク)」です。ニュースなどでパレスチナ関連の話題の際によく登場する、集団礼拝の中枢です。   

エルサレム、アル・アクサモスク
アル・アクサモスク

内部はバシリカ形式の広大な空間が広がっていますが、非ムスリムが立ち入るには非常に緊張感のある雰囲気が漂っています。ここも現在は内部見学ができませんが、その威容は外からでも十分に感じられます。   

パレスチナ、アル・アクサモスク
ここは厳しかった

空間を繋ぐ「マワーズィーン(アーチ)」

広場から岩のドームがある一段高い場所へ上がる階段には、「マワーズィーン(天秤)」と呼ばれる美しい列柱門(アーチ)があります。これらは、最後の審判の際に魂を量る天秤が掛けられる場所という伝承に由来しています。   

エルサレムマワーズィーン(天秤)
マワーズィーン(天秤)

鎖のドーム:細部に宿る幾何学模様

岩のドームの東側に隣接する小さな建物が「鎖のドーム」です。

鎖のドーム
鎖のドーム

岩のドームの雛形として、あるいは建設時の宝物庫として建てられたと言われています。

鎖のドーム天井
鎖のドーム天井

この建物には壁がないため、内部の床やドーム天井の装飾を間近に観察できます。

鎖のドームの内部
鎖のドームの内部

そこには、イスラム美術特有の幾何学模様と植物的なモチーフが緻密に施されており、当時の芸術性の高さを物語っています。   

鎖のドームの内部の床
鎖のドームの内部の床

訪問前に必ず知っておくべき厳格なルール

この聖域は観光地であると同時に、極めて繊細な宗教施設です。トラブルを避けるため、以下のルールを厳守してください。

ドレスコードと所持品

  • 服装
    男女ともに肩、胸元、膝を完全に隠す服装が必須です。タイトな服やレギンス、露出の多い服は入場を拒否されます。
  • 他宗教の象徴物
    聖書、十字架、ダビデの星、キッパ(ユダヤ教の帽子)など、他宗教を象徴する物品の持ち込みは一切禁止されています。カバンの中にあっても没収・退場となる可能性があります。   
  • 宗教的行為
    非ムスリムが広場内で祈りの仕草を見せることは厳禁です。   

「皮革製品」に関する特殊な知識

ユダヤ教の宗教法(ハラーハ)に基づき、この場所の神聖さを尊重する人々は、動物の死を連想させる「革靴」を履かずに訪問することがあります。布製やゴム製の靴であれば「靴」とみなされないという解釈があり、宗教目的で訪れるグループはこれを必ず実践しています。

終わりに

神殿の丘の見学中、イスラエル兵に護衛されたユダヤ教徒が敷地内を歩いている光景を目にすることがあります。これは「ステータス・クォ(現状維持)」を巡る複雑な情勢を象徴しており、現地では常に緊張感が漂っています。   

神殿の丘
イスラムの聖地にユダヤ人が入り込む

しかし、その緊張感を超えてでも見る価値があるのが、岩のドームの美しさです。西門から旧市街の喧騒へと戻る時、あの静謐な空間と黄金の輝きが、深く心に刻まれているはずです。

岩のドームの場所はコチラ

投稿者 iryota_gram

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