らくがき寺

京都府八幡市にある単伝庵(たんでんあん)、通称「らくがき寺」は、願い事を小さな絵馬に書く代わりに、なんとお堂(大黒堂)の真っ白な壁に直接ペンで書き込むのです 。  
また、この寺にある今にも飛び出しそうな姿をした「走り大黒」。
壁への「直アピール」という祈願方法と、速やかに福をもたらす神様。今回はそんなユニークな「らくがき寺」について紹介します。。

60年の歴史を持つ「願いの壁」の祈願法

「らくがき寺」の名の由来となった大黒堂の壁への書き込みは、いつ、どのように始まったのでしょうか。

単伝庵(らくがき寺)
落書き寺の裏口

「大黒様によく見ていただく」ための直談判

この習慣は、寺院が荒廃から復興する過程、1957年(昭和32年)頃の、大黒堂再建当時に始まります 。当時の和尚は、復興に力を貸してくれた支援者たちを招いた落慶式で、「皆様の様々な願いを、大黒様に最もよく見ていただけるよう、壁に書いていただきましょう」と発案しました 。  

単伝庵(らくがき寺)大黒堂
単伝庵(らくがき寺)大黒堂

これは、従来の絵馬奉納に代わり、本尊と参拝者の間に障壁を設けない、極めて開かれた祈願方法として定着しました 。内壁には、「就職できますように」といった具体的な願いから「世界平和」といった壮大なものまで、現代の切実な願望がぎっしりと書き込まれています 。  

年に一度、願いはリセットされるのか?

この壁は、永遠に残り続けるわけではありません。通常、大晦日になると、僧侶たちの手によって白いペンキで上塗りされ、元旦には清浄な白壁にリセットされます 。  

単伝庵(らくがき寺)大黒堂
大黒堂内部にあるたくさんの落書き(願い)

しかし、これは願いが消えることを意味しません。塗り重ねられた何層もの白壁の下には、過去の参拝者たちの願いが凝縮されており、この積み重ねが、目に見えない後押しとなり、人々の願いを成就させる力になると説いています 。新たな白い壁に願いを書く行為は、過去を完全に浄化し、新しい年に向けて「再生」する機会を私たちに提供しているのです。  

単伝庵(らくがき寺)らくがきの注意点
らくがきの注意点

臨済宗寺院に大黒様?神仏習合が生んだ「福の神」

単伝庵は、禅宗の一派である臨済宗妙心寺派の寺院ですが 、その中心的な信仰対象は、仏法を守護する護法神から変化した大黒天です。

インドの破壊神から日本の福の神へ

大黒天の起源は、インドのマハーカーラ(Mahākāla)という破壊と時間の神です。この強力な神格が仏教に取り入れられ、特に禅宗寺院においては、食料や財産を守る厨房神(伽藍神)として祀られるようになりました。

その後、日本で「ダイコクテン」の音が、国土経営の神である大国主命(オオクニヌシノミコト)の「オオクニ」と通じたことから、両者が同一視される神仏習合が起こりました。これにより、大黒天は憤怒の姿を脱し、頭巾をかぶり、袋と小槌を持つ、柔和な「福の神(大黒様)」として民衆に定着しました。

単伝庵(らくがき寺)大黒堂の内部
大黒堂の内部

単伝庵が戦後復興期の1950年代に、現世利益性が高く、親しみやすい大黒天を信仰の中心に据えたことは 、荒廃した寺を開放し、広く人々の心願成就に応えようとした、極めて実用的な信仰の選択であったと言えます 。

ご利益は猛スピードで!「走る」大黒様が約束するもの

大黒堂の本尊として安置されているのは、七福神の一柱である大黒天の小さな木像、通称「走り大黒」です 。  

今にも動き出しそうな動的な姿

この大黒天像は、足を踏み出しているように彫られているのが最大の特徴です 。大きな袋を背負い、打ち出の小槌を手に持ったその姿は 、「今にも動き出しそうな姿をしており、すぐさま願いごとをかなえてくれそう」という期待を参拝者に抱かせます 。 

大黒堂にある「走り大黒」
大黒堂にある「走り大黒」

この「走る」という動的な姿勢には、願い事を速やかに成就させるという意図が込められています。さらに、「走り大黒」という名前には、「走って人を追い越す」という意味合いも含まれているため、商売繁盛や出世の福神として、特に信仰を集めてきました 。  

武将・楠正成の強い願いが込められた木像

この像には、南北朝時代の武将楠正成(くすのきまさしげ)にまつわる由緒ある伝承が付随しています。伝説によると、この「走り大黒」像は、楠正成が戦の勝利を祈願して近隣の石清水八幡宮に寄進した楠木の一部から作られたと伝えられています 。武将の切実な願いと、力強い成功への思いが、この像に宿っているのです。  

現代に寄り添う、開かれた信仰の場

単伝庵(らくがき寺)
単伝庵(らくがき寺)入口

京都府八幡市の単伝庵は、壁への「らくがき」という直接的な祈願と、「走り大黒」の速やかなるご利益によって、現代社会の課題(スピード、即効性、具体的な利益)に真っ向から応える、開かれた信仰の場です。京都を訪れた際は、ぜひ、あなたの願いをこの白い壁に「直アピール」し、走り大黒に猛スピードで叶えてもらってみてはいかがでしょうか。

単伝庵(らくがき寺)駐車場
単伝庵(らくがき寺)駐車場

らくがき寺の場所はコチラ

京都府八幡市八幡吉野垣内33

またこの近くには飛行機の神様を祀る飛行神社もあります!

投稿者 iryota_gram

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です