ラダックへ行く為の準備

日々の仕事に追われる中、カレンダーの巡り合わせで数年に一度やってくる長期夏季休暇。せっかくの貴重な時間を使って「インド・ラダック」への旅を計画している方も多いのではないでしょうか。

今回は、2025年夏にラダックへ行った際に、実際に準備した事や、行った先でどうなったのか。
長期休暇がなかなかとれない会社員の「短期決戦型ラダック旅」のポイントを整理しました。

サラリーマンのための計画的ラダック旅

夏がベストシーズン!でも「長期休暇」は本当に必要?

ラダックやザンスカール地方は、インド北部・ヒマラヤ山脈の中に位置する標高3,000m以上の高地。年間を通して気候の変化が激しく、旅のタイミングを間違えると、まったく別世界のような環境に直面します。

冬のラダック(10月〜4月上旬)は、気温が氷点下を大きく下回り、時にはマイナス20℃にもなる極寒の地。街の水道は凍結し、多くのホテルやレストランが休業します。

ラダックレーの街並み
ラダックレーの街並み

一方、4月中旬〜9月にかけては気温が安定し、澄んだ青空とヒマラヤの山々、そして緑があふれる夏のラダックらしい景観を楽しむことができます。
まさにこの期間が「観光ベストシーズン」。日本の夏季休暇を利用して訪れるには、もっとも理想的なタイミング。

では、実際にどのくらいの休暇が必要なのか?
日本からラダック(レー)までは、デリー経由で片道約2日。現地観光に充てられるのは3日ほどと考えると、最低でも7日間の休暇が必要です。
私自身、8日間の休暇を使って訪れましたが、旅程を振り返ると7日間でも十分楽しめたと感じています。

ただし、標高3,500mを超えるラダックでは「高山病」対策がとても重要。
現地到着後2日間ほどは体を慣らす時間をとるのが理想的です。そのため、安全性を優先するなら8日間の休暇を確保するのがベスト。
短期で効率よく、かつリスクを抑えて旅を満喫する、これこそサラリーマン旅行の鉄則です。

飛行機でいきなり標高3,500mへ?最も注意すべき「高度の壁」

ラダック旅行でまず理解しておきたいのが、その極端な地理的条件です。
中心都市レーはなんと標高約3,505m。これは、一般的に高山病のリスクが高まり始める2,500mを大きく上回る高さです。

レー行きのIndiGO国内線
レー行きのIndiGO国内線

多くの旅行者は、日本からデリーを経由し、そこから飛行機でレーへ向かいます。問題はこのルート。わずか数時間のフライトで、一気に標高を3,000m以上も上げてしまうのです。
つまり、身体が気圧の低下や酸素の薄さに順応する時間をまったく持てないまま、いきなり高地へ「ワープ」してしまうようなもの。

この「短時間での急激な高度上昇」こそが、短期旅行者にとって最大の落とし穴です。
どんなに体力に自信がある人でも、頭痛や吐き気、倦怠感など、高山病の初期症状に見舞われる可能性があります。

最重要テーマ:「高山病」対策、科学と実体験から学ぶラダック旅の心得

高山病は誰にでも起こりうる

高山病とは、標高2,500m以上の高地で酸素濃度が低下することで起こる、体のストレス反応の一種です。
ラダックの中心地レーは標高約3,500m。つまり、どんなに健康でも、体力に自信があっても、誰でも発症する可能性があるということです。
デリーからレーに帰るラダック出身の人も高山病対策のため水を持参して飛行機に乗り込んでました。

ラダック上空
インド北部上空

主な症状は、頭痛・吐き気・食欲不振・全身のだるさ・めまい・立ちくらみ・寝つきの悪さなど。
症状の出方や重さには個人差があり、実際に現地へ行ってみないとわからないのが難しいところです。

残念ながら、「高山病にならないためのトレーニング」というものは存在しません。
出発前にできる最善の準備は、体調を万全に整えることだけです。
睡眠不足や疲労、飲酒はリスクを高める要因になるので注意しましょう。  

ダイアモックスは「特効薬」ではないが、確かな効果がある

私自身、高山病対策として医師に相談したところ、「ダイアモックス250mg」を10錠処方してもらいました。
これは高山病専用薬ではなく、血中の酸素量を増やし、身体の順応を助ける薬です。医師からも「万能ではないが、予防には有効」と説明を受けました。

ダイアモックス
日本のかかりつけ医に処方してもらった

実際に出発の2日前から服用を始め、ラダックを離れる7日目まで継続。
結果的に、私自身はほとんど症状を感じませんでした。
「薬が効いたのかどうか分からない」という感想でしたが、裏を返せば、それだけ高山病の症状が出なかったということ。
つまり、ダイアモックスが順応をスムーズにしてくれた可能性が高いと考えています。

ダイアモックスの効果と正しい使い方

ダイアモックス(アセタゾラミド)は、体が高地に慣れるまでの時間を通常の24〜48時間から、12〜24時間程度に短縮する効果があるといわれています。
また、睡眠中の不規則な呼吸を緩和し、むくみを抑える働きもあります。
つまり、「発症した後に治す薬」ではなく、高山病の発生を防ぐ・軽くする薬です。

服用のタイミングは、多くの医療機関で「高地に到着する前日〜2日前」からの開始が推奨されています。私の場合も同様に、出発2日前から飲み始め、滞在中ずっと継続。副作用は特に感じませんでした。

一般的に報告されている副作用としては、手足や唇のしびれ、味覚の変化、頻尿などがあります。
ただし、服薬をやめれば自然に回復するケースがほとんどです。

薬に頼らない高山病対策:行動・水分・睡眠を整える3つのポイント

ダイアモックスなどの薬を服用するだけでなく、日々の行動や体のケアを工夫することが高山病を防ぐ最大のカギになります。
ここでは、私自身の体験と現地で得た知見をもとに、薬に頼らずに実践できる3つの予防策を紹介します。

 行動編:初日は“頑張らない”勇気を持つ

ラダック到着初日は、何よりも「高所順応」を最優先にしましょう。
飛行機で一気に3,500mの世界へ来た体は、体感以上に疲れています。

ラダックのホテル
ホテルのテラスにて休憩

この日は観光を詰め込まず、軽い散歩やカフェでの休憩程度にとどめるのが理想です。
重い荷物を持ち歩いたり、寺院の階段を登りまくったりするのはNG。

私自身も初日は体力温存に徹し、現地SIMカードの購入やツアーの予約など、軽めの事務作業を中心に過ごしました。
結果的に、翌日から体調良く行動できたので、初日は動かない勇気が大切だと痛感しました。

水分編:がぶ飲みより“こまめな補給”が効果的

高地では空気が乾燥しており、体内の水分がどんどん奪われます。
一般的に「1日2〜3リットルの水分補給」が推奨されていますが、これは無理にペットボトルの水を大量に飲むという意味ではありません。

スープやお茶など、温かい飲み物から自然に摂る水分も十分に有効です。
私は事前に大量に飲んでしまったために到着直後に「トイレに駆け込む」という失敗を経験しました。
それ以来、無理に飲むのではなく、まめに飲むようにしました。

睡眠編:昼寝とお酒に注意!眠り方にもコツがある

ラダック滞在中、私は一度、昼寝のあとに「軽い二日酔いのような頭痛」を感じたことがありました。
原因はおそらく、高地で起こりやすい睡眠時の呼吸の浅さです。

ラダックの宿
ついつい寝落ちした

標高が高い場所では、睡眠中に呼吸が浅くなり、酸素不足になりやすいことが知られています。
これが頭痛や倦怠感につながることもあるため、昼寝はできるだけ控えるのがおすすめです。

また、夜間もアルコールや睡眠薬の使用は避けましょう。
どちらも呼吸を抑制し、酸素の取り込みを妨げる恐れがあります。

※今回レーでお世話になったホテルはコチラ
ザ・パンゴンホテル

ラダック現地での実践ガイド、到着後に意識すべき過ごし方

到着初日と順応日の過ごし方

初日は「何もしない勇気」を

ラダックに到着したら、まずは行動より順応を最優先にしましょう。
標高3,500mという環境では、初日から動き回るのは高山病のリスクを高めるだけ。焦らず、体を慣らす時間を確保することが大切です。

私自身も、到着した日は観光を一切せず、体力を温存しながら、現地SIMの購入やツアー予約といった事務的な用事だけを済ませました。こうした軽い作業であれば、無理なく過ごせるうえに、その後の旅の準備も整うので一石二鳥です。

1〜3日目は「順応期間」と割り切る

ラダックでは、ほとんどの旅行者が到着から1〜3日ほどかけて徐々に体を慣らしていきます。私の場合も、到着2日目には頭痛がすっと消え、体が高地に馴染んだ感覚を得ました。

逆に、もし頭痛や吐き気などの高山病の兆候が出た場合は、「休むことこそが最善の行動」です。無理に行動せず、温かい飲み物を取りながら静かに体を休めることで、多くの場合は自然と回復します。

症状が悪化する気配があれば病院、もしくは高度を下げるといった処置が必要になります。

旅を楽しむための最初のステップ

「せっかく来たのだから早く観光したい」と思う気持ちは当然ですが、ラダックでは初日をどう過ごすかが、その後の旅の快適さを大きく左右します。
最初の数日は、景色を眺めながらゆっくり過ごす。それが、結果的に最高の旅を楽しむための最短ルートです。

旅の持ち物と服装:8月のラダックを快適に過ごすために

8月のラダックは、日中の気温が25℃前後と過ごしやすいものの、高地特有の強烈な日差しが特徴です。まるでドライヤーを近づけられたような熱波を感じることもあります。

日中の観光や散策は、半袖と軽いパンツで十分対応できますが、日焼け対策として長袖シャツや薄手の羽織りを持っておくと安心です。特に直射日光の下では、肌を覆うほうがかえって快適に過ごせます。

一方で、夜になると気温は一気に下がり、20℃を下回ることも。窓を開けたまま寝ていると肌寒く感じるほどです。そのため、軽めのフリースやウィンドブレーカーなどの防寒着は季節を問わず必携アイテムです。

パンゴン湖
8月日中のパンゴン湖、半袖で大丈夫

また、レー(Leh)より標高がさらに高いパンゴンツォ湖(Pangong Tso)周辺でも、日中は半袖で快適に過ごせます。ただし、朝晩は気温がぐっと下がるため、寒暖差に対応できる重ね着スタイルを心がけましょう。 

失敗しないための短期決戦モデルプラン

短い休暇を無駄にせず楽しむためには、高山病対策をしつつ観光も楽しめる日程作りが重要です。
以下に、私の体験をもとに作った7日間と8日間のモデルプランをご紹介します。

日数7日間モデルプラン(最低日数)8日間モデルプラン(推奨)
1日目日本からデリーへ移動日本からデリーへ移動
2日目デリーからレーへ移動デリーからレーへ移動
3日目高山病順応日(午前中) レーの街を散策高山病順応日(午前中) レーの街を散策
4日目僧院巡り(上ラダック)僧院巡り(上ラダック)
5日目パンゴンツォ日帰り観光パンゴンツォ日帰り観光
6日目レーからデリーへ移動レー観光・ショッピング他
7日目 デリーから日本へ移動レーからデリーへ移動
8日目 デリーから日本へ移動

限られた夏休みでも、準備と高山病対策さえ整えば、ラダックの絶景と文化を存分に楽しめます。
あとは有給休暇の申請のタイミングを失敗しない事だけです。

ラダック・レーの場所はコチラ

投稿者 iryota_gram

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