釜山現代美術館を訪れた時、ちょうど「釜山ビエンナーレ2018」が開催されていました。そのテーマは「Divided We Stand(分断されれば、我々は滅びる)」。冷戦後も続く社会の分裂や対立が人や芸術にどう影響するかを問いかけ内容で、特に北朝鮮に関連する展示がとても印象的でした。

釜山現代美術館(Museum of Contemporary Art Busan, MOCA Busan)は、2018年6月にオープンした美術館 。開館直後の2018年9月から開催された釜山ビエンナーレ主要会場になってました。
DMZのコラージュに込められたメッセージ
美術館の壁には、「DMZ」の文字が写真のコラージュで表現された作品がありました。これは、朝鮮半島の物理的な分断を象徴する非武装地帯(DMZ)をテーマにしたもので、韓国人アーティスト達が、この敏感な境界線にまつわる作品を展示していました。立ち入りが制限されたDMZを、芸術を通して間接的に体験させる試みは、分断の現実を考えさせるものでした。

壁の「DMZ」は、北を風刺するチラシや漫画などでコラージュされてました。
南北で違うチョコパイの価値観
そして、床一面に敷き詰められた大量のチョコパイの展示。これは韓国系アメリカ人アーティストによる《チョコパイを一緒に食べよう》というインスタレーションで、10万個ものチョコパイが使われていました。

韓国のチョコパイ「情(ジョン)」は、人情を意味する名を持つ国民的お菓子。北朝鮮との関係では、開城工業団地で働く北朝鮮労働者への報酬代わりに配られ、高く取引される裏通貨のような存在に。南の文化が北へ広がる象徴とされ、当局により支給が制限されたことも。単なる菓子以上に、南北の文化的・政治的つながりを映す象徴とされています。

観客は実際にチョコパイを手に取って食べることができ、北朝鮮では裏通貨の様に扱われているチョコパイがここでは食べ放題という皮肉を感じるインスタレーションでした。
日本でもオリオンのチョコパイが買えます。
体制を「ネタ」にするアートの衝撃
さらに印象的だったのは、北朝鮮のミサイルや将軍様をモチーフにした、ある種の「いじられた」イラストが描かれた赤い壁の作品。

北朝鮮政治体制という非常にデリケートなテーマが、このように直接的かつ批判的に、あるいはユーモラスに扱われていることに、正直驚き。これは冷戦イデオロギーやプロパガンダの再解釈を表現しているらしい 。

これらの展示は、美術作品を鑑賞するという枠を超え、朝鮮半島をめぐる複雑な歴史や現状、そこに生きる人々の感情に向き合う機会を与えてくれます。芸術が、ときに鋭い視点や皮肉を通じて社会の矛盾をあぶり出し、思考と対話を促す存在であることを強く印象づけられた展示会でした。
