Nizamuddin Basti

デリー観光の目玉、フマユーン廟を見学し終える頃には、夕闇が迫り、心地よい空腹感に包まれていました。廟の出口を出て正面にそびえる青いタイルのドーム「サブズ・ブルジ(Sabz Burj)」を通り過ぎると、そこにはオールドデリーを彷彿とさせる、建物が密集した混沌としたエリアが広がっています。

フマユーン廟の影に広がる、迷宮のような「バスティ」

ここは「ニザームッディーン・バスティ(Nizamuddin Basti)」。デリーの中でも特にムスリム人口の比率が高い場所として知られています。行き交う女性たちの多くがヒジャブを被り、通りにはスパイスと肉を焼く香ばしい匂いが立ち込めていました。

ニザームッディーン・バスティ(Nizamuddin Basti)の屋台街
ニザームッディーン・バスティの街並み

実はこのエリア、わずか0.17平方キロメートルの範囲に約25,000人が居住しており、1平方キロメートルあたりの人口密度に換算すると147,000人という、デリー屈指の超高密度居住地なのです。

なぜこのエリアにはムスリムが多いのか?重層的な歴史の背景

なぜこれほどまでにムスリムの人々がこの場所に集まっているのでしょうか。そこには3つの大きな歴史的理由があります。

1. 14世紀の聖者による開拓

この地区の起源は、13世紀末から14世紀初頭のデリー・スルタン朝時代に遡ります。聖者が入植し、修道所を設立しました。そこから多くのムスリム信奉者が周囲に住み着いたのが始まりです。

2. 1947年、分離独立時の「セーフ・ゾーン」

1947年のインド・パキスタン分離独立に伴う暴動の際、政府は混乱からムスリムを守るために特定の地域を「ムスリム・ゾーン」に指定し、その一つがニザームッディーンでした 。周辺の混合居住区から逃れてきた数万人の避難民がこの地に定住したことが、決定的な要因となりました。

3. 世界的な宣教運動の拠点

ここには、1920年代に誕生した世界最大のイスラム改革・宣教運動「タブリーグ・ジャマート(Tablighi Jamaat)」の世界本部である「マルカズ(Markaz)」があります。世界中から毎年数百万人の宣教者がここを訪れるため、周辺にはイスラム関連の商店やゲストハウスが密集し、イスラム経済圏が形成されています。

「TAHIR KABAB CORNER」の水牛ティッカロール

そんな歴史の重みを感じながら歩いていると、ひときわ活気のある店「TAHIR KABAB CORNER」に目が留まりました。店頭では炭火で肉が焼かれ、揚げ物の小気味よい音が響いています。

ムスリムエリアにあるケバブ屋さん
ムスリムエリアにあるケバブ屋さん

店内でメニューを開くと、驚きの文字が。「チキン」「マトン」……そして「バッファロー(水牛)」。

迷わず「バッファローのティッカロール」を注文しました。ジューシーに焼き上げられた肉が薄いパンに巻かれ、スパイシーなソースと相まって驚くほどの美味しさ!ムスリム地区ならではの、力強い食文化を肌で感じた瞬間でした。

バッファローのティッカロール
バッファローのティッカロール

このインド旅行時、ヒンドゥー教徒は牛全般が食べれないと私は思っていました。
なので牛(水牛)をメニューとして提供するムスリムの人達は、多数派のヒンドゥー教徒が反感をかうのではないかと考えていました。

インドで「牛」が食べられる理由

「インドで牛を食べた」と言うと驚いてくれると思ってましたが、調べてみるとヒンドゥー教において牛(コブウシ)は神聖な動物として保護されていますが、バッファロー(水牛)は扱いが異なってました。

ヒンドゥー教の神話において、水牛は「マヒシャ」という悪魔(アスラ)の化身、あるいは死の神ヤマの乗り物とされています。そのため、水牛の肉を食べることは宗教的なタブーに抵触しない場合が多いようです。

サブズ・ブルジ(Sabz Burj)
サブズ・ブルジ(Sabz Burj)

とはいえ、菜食主義者が多いヒンドゥー教徒のお店では水牛肉を見かけることは稀です。ここニザームッディーンのようなムスリムのコミュニティだからこそ、安価で良質なタンパク源として水牛料理が日常的に提供されているのです。

まとめ:歴史と信仰が息づく、デリーの「生きた遺産」

偶然立ち寄った屋台での食事でしたが、700年続く聖者の教え、分離独立の苦難、そして現代のグローバルな信仰のネットワークが複雑に絡み合ったニザームッディーン・バスティの姿でした。

デリーを訪れた際は、フマユーン廟だけでなく、その周辺の人々の暮らしと、日本ではなかなか味わえない水牛料理を体験してみては。

ニザームッディーン・バスティの様子をリール動画で

ニザームッディーン・バスティの場所はコチラ

投稿者 iryota_gram

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