インドネシアの世界遺産の街・ジョグジャカルタ。 プランバナン寺院やボロブドゥール寺院など壮大な歴史遺産を目指して移動していると、道路の交差点でふと目を奪われる光景に出会うことがあります。
車の窓の外を見ると、派手なメイクとかつらをかぶり、全身クラウン(ピエロ)の衣装を着た人物が、音楽を響かせながら渋滞の車列へ近づいていく姿。
今回は、インドネシアの路上パフォーマー「Pengamen(ペンガメン)」を紹介します。
渋滞の列に近づくクラウンたち|プランバナン周辺
プランバナン寺院周辺は観光客や地元の車で交通渋滞が激しく、交差点では長い車列が赤信号を待っています。その渋滞中に、小型スピーカーから音楽を鳴らしながら、全身ピエロの格好をした人物が歩いてきました。

ジャグリングなどの特別な大道芸を繰り広げるわけではなく、音楽に合わせて体をぐねぐねとユーモラスに動かしながら車へ近づき、窓越しにチップ(小銭)を受け取っていきます。
東南アジアの強烈な日差しが照りつける中、長袖の衣装にメイク、かつらまでかぶって活動する姿は、見ているだけでも汗がにじんできそうなほどハードです。
移動中に目撃した「素顔」|Grabの車窓から見えた過酷な現実
さらに、ボロブドゥール寺院からジョグジャカルタ市内へGrabで移動中、道路脇の日陰で着ぐるみの大きな頭をパカッと外し休憩しているパフォーマーの姿を発見。

赤道直下のインドネシアは、立っているだけでも体力を奪われる熱帯気候。風通しの悪い着ぐるみや分厚い衣装の中に何時間も身を包むのは、想像を絶する重労働です。これは単なる仮装ではなく、生活を賭けた切実な仕事なのです。
彼らの正体は?路上芸人「Pengamen(ペンガメン)」の文化
インドネシアでは、路上や交差点、バス車内などで歌や芸を披露してチップをもらう流しの芸人たちを総称して「Pengamen(ペンガメン)」と呼びます。
もともとはウクレレやギターを抱えて歌うストリートミュージシャンが主流でしたが、近年交差点で急増しているのが、ピエロの格好をした「Badut Jalanan(路上のピエロ)」や「Pengamen Badut」と呼ばれる人々です。

なぜピエロ姿が急増したのか?
このスタイルが急激に広まったきっかけは新型コロナウイルスのパンデミックの頃のようです。
- 初期投資の手軽さ
器演奏のような特別な技能がなくても、衣装さえあればすぐに始められる。 - 衣装レンタル業の存在
専門の業者から1日あたり2万〜5万ルピア程度で衣装をレンタルして路上に出る仕組みが定着。 - 失業者の受け皿
失業した人々の当面の日銭を稼ぐ手段として広がった。
ジョグジャカルタだけではない!ジャカルタの「銀色人間」とマレーシアの着ぐるみ
路上パフォーマンスによる小銭稼ぎは、インドネシア各地や隣国マレーシアでも異なる形で見られます。
首都ジャカルタの「Manusia Silver(銀色人間)」
首都ジャカルタの交差点では、クラウンだけでなく、全身にメタリックな銀色塗料を塗りたくったパフォーマーや、車道の間を縫ってお菓子や小物を手売りする物売りの姿を頻繁に見かけます。
マレーシア・マラッカの「Maskot Jalanan」
同じ東南アジアで、マレーシアの世界遺産の街・マラッカでもよく着ぐるみたちを見かけます。
マラッカの着ぐるみパフォーマーについては、以前こちらの記事でも紹介しています。
◇マレーシア・マラッカの街角で見かけた着ぐるみたち
路上クラウンが直面する社会問題と現地の取り締まり事情
物珍しくコミカルに映る路上のピエロたちですが、現地では社会問題としても議論されています。
交通安全と児童搾取
赤信号の間に車道へ入り込むため、接触事故の発生。さらに、子どもに着ぐるみを着せて働かせたり、乳幼児を連れて同伴する事例です。児童福祉の観点から懸念が持たれています。
地元警察による摘発
ジョグジャカルタ特別州で定められている「路上での物乞い・浮浪行為を禁止する条例」により、地元警察が定期的に交差点で摘発を行っています。
終わりに:交差点の風景から見える東南アジアの現実
ジョグジャカルタの交差点で見るクラウンたちの姿。一見すると観光地ならではのストリートカルチャーのようにも見えますが、その背景には熱帯の過酷な労働環境と、今を生き抜こうとする人々のシビアな現実が横たわっています。
(※記事内の写真・動画は2025年1月に私が実際に撮影したものを利用しています。)

