今回は、イスラエルの死海南部、リゾート地として知られるエンボケック(Ein Bokek)にある、神秘的なスポット「塩の道」をご紹介します。
真冬の死海。さすがに海水浴をするには寒すぎたため、パブリックビーチでの海水浴はあきらめ、周辺を散策してみることにしました。そこで偶然見つけたのが「純白の一本道」でした。
死海のエメラルドグリーンに映える純白の一本道へ
エンボケックのパブリックビーチを出て、死海の海岸線に沿ってしばらく北上していた時のことです。目の前に、何やこれという光景が現れました。

なんと、海岸から対岸のヨルダン側に向かって、地平線の先までまっすぐ死海の海上に伸びる「道」があるのです。
特に立入禁止の看板なども見当たらなかったため、好奇心に駆られて歩き始めてみることにしました。
ゼブラ模様から白一色の世界へ

道の始まり(海岸側)は、土と塩が混ざり合った「ゼブラ模様」のような不思議な地表をしていました。しかし、沖へ進んでいくにつれて周りの土砂は姿を消し、道路は眩しいほどの「塩の白一色」へと変化していきます。

道幅はだいたい4〜5メートルほど。両脇は、息をのむほど美しい死海のエメラルドグリーンの海水に囲まれています。エメラルドグリーンの水面、真っ白な塩の道、そして頭上に広がる青い空。この3つだけが存在する、極めて幻想的な空間です。
塩の道にぽつんと置かれた「白いビーチチェア」
しばらく歩いていると、道の途中に、ぽつんと白いビーチチェアが置かれているのを見つけました。

結晶化した塩でガチガチに固まった白い地面、透き通ったエメラルドグリーンの海、そして果てしない空。その風景の中にぽつんと佇むビーチチェアは、まるで「極地の特等席」のようで、最高にシュールで絵になる1枚になりました。
果てしない道のりと、静寂を破る戦闘機の爆音
道は行けども行けども永遠に続いており、このまま死海の中央にある「ヨルダンとの国境」まで行けるのではないかと思わされるほどでした。しかし、帰りの引き返す時間を考慮し、国境手前で泣く泣く引き返すことに。
体を反転させ、イスラエル側の岸へと戻り始めます。ヨルダン側を向いていた時はどこまでも続く水平線しか見えませんでしたが、反対を向くと、そこには生命の気配を一切感じさせない、乾いた茶褐色の荒々しい岩山が広がっていました。

その帰り道、不意に静寂が破られました。死海の上空を、南部エイラト方面に向かって飛ぶイスラエル空軍のジェット戦闘機が、何機も低空で通り過ぎていったのです。ヨルダン国境付近のパトロールだと思われますが、遮るもののない大自然の中で聞く戦闘機の爆音はとてつもない騒音で、中東の日常にある緊張感を肌で感じる瞬間でもありました。

散策中、私のほかに数組ほど同じように歩いている観光客を見かけました。死海といえば「ぷかぷか浮かぶ読書」が定番ですが、「死海の上を歩く」というこの上なくユニークで貴重な体験は、一生の思い出になりました。
「塩の道」はなぜできた?
この不思議な「塩の道」ですが、完全に天然でできたものではなく、気候変動と人間の活動が合わさって生まれた物なのです。
この道は、もともと死海を管理する「死海工業(Dead Sea Works)」が、水質測定や工事などの各種作業を行うために土砂を積み上げて造った、ただの道路でした。

死海は現在、年間約1.1〜1.2メートルという非常に速いペースで水位が低下しています。この急激な水位低下に伴い、かつては水面下に隠れていたこの作業用道路の基礎が地表に完全に露出したという。
露出した未舗装路の表面に、死海の超高濃度な塩分が激しい太陽光で蒸発・結晶化して蓄積していき、長年かけて塩の結晶が幾重にもコーティングされた結果、土の道が厚い純白の結晶層で覆われ、現在の美しい「塩の道」へと生まれ変わったのです。
「塩の道」へのアクセス方法
「塩の道」は、エンボケックのホテル街が建ち並ぶエリアのすぐ北側に位置しています。

エンボケックの街の北端にある五つ星ホテル「デビッド・デッドシー・リゾート&スパ(David Dead Sea Resort & Spa)」から北に約20分ほど歩くと「塩の道」の起点に到着します。
もしくはパブリックビーチから海岸にそって北上してもたどり着きます。
安全に楽しむための必須の注意点
死海の上を歩く素晴らしい体験ですが、注意事項もあります。

必ず「靴」を履いて歩くこと!
死海の塩の結晶は、時にカミソリやガラス片のように非常に鋭利に尖っています。素足や薄いサンダルで歩くと、足を深く切って大怪我をする危険があります。必ずマリンシューズや、底が厚く密閉されたスニーカーなどを履いてあるきましょう。
シンクホール(陥没穴)のリスクに注意
死海沿岸エリアは、地盤沈下によって突如地面が崩落する「シンクホール(陥没穴)」が多発する危険地帯でもあります。不用意に整備された道から外れて泥地や怪しい場所に足を踏み入れないよう注意です。
国境を越えてヨルダン側へ渡ることは絶対に厳禁!
「塩の道」はヨルダン側に向かってまっすぐ伸びていますが、この道はイスラエルとヨルダンを隔てる極めてデリケートな国境地帯に位置しています。面白半分で歩き続け、国境線付近の立入禁止エリアへ入らないこと。悪ノリすると最高に面倒くさい事になります。
まとめ:冬の死海観光のハイライトに!
冬の死海は水に入るには少し肌寒いですが、この「塩の道」の散策は、汗をかくことなく、死海の最も美しいカラーコントラストを体験できる最高の手段です。
エンボケックを訪れた際は、ぜひしっかりとした靴を準備して、この青と白の塩の道を歩いてみてください!
◇イスラエル死海エンボケックのパブリックビーチの記事はコチラ
(※記事内の写真は2018年12月に私が実際に撮影したものを利用しています。)

