現在少しずつ紀伊半島がもののけ化してる問題の第一弾。
街の重要インフラが蛙化現象を起こしている和歌山県日高郡印南町(いなみちょう)の紹介!

太平洋に面し和歌山県の南北の中間あたりに位置する印南町は、有名観光地白浜の通り道で普段素通りされがちですが、「カエル」のユニークな存在によって静かな注目を集めている。

今回は印南町を象徴する2つの“カエル”「カエル橋」と「JR紀勢本線印南駅」を中心に、ふるさと創生事業という魔法の効果を紹介。

かえる大橋:交通安全と地域愛の象徴

印南町の大動脈とも言える国道42号線から少し町に入ったところに、ひときわ目を引く橋がある。鉄道をまたぎ高台とつなぐトラス橋のトラス部分が巨大なカエルになってしまった橋。
地元では「蛙橋(かえるばし)」の名で親しまれている。

橋の上部には大きな黄色の蛙が

「考える」「人をかえる」「町をかえる」「古里へかえる」「栄える」という5つの”かえる(思い)”がこの橋には込められている。

カエル大橋をくぐる紀勢本線の特急くろしお

この遠くから見るとカエルが大きく股を開いている様にも見え、寺社建築の蟇股を連想させますが、本来の蟇股は上部の梁などを支えるのに対して、カエル橋の股は橋脚を持ち支えるトラスの役割を果たしています(たぶん)。

このカエル化した橋は、平成初期の「ふるさと創生1億円事業」によって生み出された。バブル経済期、全国の自治体に一律1億円が交付された際、印南町が選んだのは「記憶に残るシンボル」。現在もこの強大なカエルは、地域のランドマークとして鎮座している。

無人化して蛙化する印南駅

印南町の道路交通の要となる道路橋がカエルに乗っ取られ、さらに鉄道までもがカエル化が進行しています。その場所が印南町の鉄道の玄関、JR紀勢本線印南駅の待合室です。

待合室では、思いもよらない出迎えが待っています。待合室に何人か待っている人がいるかと思いきやその姿、よく見るとそれはすべて“カエル”。

ただの置物ではありません。
この愛らしいカエルたちは、2014年から駅に“常駐”し始めたアート作品たち。地元のアートプロジェクト「紀の国トレイナート」の一環として誕生し、最初は6体。そして今では8体にまで“増殖”しています。

たてこもりを続けるカエルたち

その名も「むかえる」。
その姿はまるで駅を“占拠”していくかのよう。青いオーバーオールを着て、まるでどこかの建設現場からやってきたような風貌。彼らは、実はこの町の象徴でもある「かえる橋」の建設作業員という設定だとか。

さらに後から加わった2体は、「DELIVER(デリバー)」という作品。小さな靴を手に、笑顔で何かを届け合うようなその姿には、町の子どもたちが参加したワークショップの温もりも詰まっています。

カエルの支配下にはいった印南駅

2022年に彼らはついに駅の駅員を追放し、駅の無人化に成功。
彼らは静かに、けれど確実にこの町を“侵食”しているのです。

印南町ではこのほかにも、道の駅や商店などでカエルをモチーフにした土産物やオブジェが見られる。交通安全の御守や、地域の特産品にカエルの意匠をあしらったパッケージなど、生活の様々なところでカエル化現象が現れている。

これが本当の「蛙化現象」

現代の若者の間では、恋愛感情が一気に冷める瞬間を「蛙化現象」と呼ぶことがある。しかし、印南町のカエル化はむしろその逆である。

初めて訪れたときは、その異様な存在感に驚きすら覚える。しかし、眺めるうちに、不思議と親しみが湧いてくる。その表情やたたずまいには、どこか安心感があり、次第に心を許していくような感覚すらある。そしていつかは蛙になるのである。

おわりに

ふるさと創生から30年以上が経過した今、印南町のカエルたちは一過性の話題にとどまらず、町の人々の暮らしに根付き、訪れる人々の記憶に残る存在となっている。

和歌山を訪れる機会があれば、ぜひ一度この「カエルの町」に立ち寄り、その独自の文化を体験してみては。

投稿者 iryota_gram

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です