ベツレヘムからエルサレムへ。わずか数キロの道のりに、人生を大きく左右する“壁”がある。
その場所の名は「Checkpoint300」。
Checkpoint 300(またはベツレヘム検問所)は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のベツレヘムとイスラエルのエルサレムを結ぶ主要な通過地点に位置する、イスラエル軍によって管理される軍事チェックポイントです。
今回は、観光地として名高い聖地ベツレヘムと、イスラエルの首都エルサレムを結ぶこのチェックポイントについて、実際に通過した時の様子ご紹介。
分離壁とは?目的と実態
分離壁(セキュリティ・バリア/セパレーション・バリア)は高さ8~9メートルにもなる巨大なコンクリートの壁で、イスラエルとパレスチナ自治区を物理的に隔てるものです。
Checkpoint300は、イスラエルが2000年代初頭に建設を開始した分離壁の一部に組み込まれていて、パレスチナ人のイスラエル側への出入りを管理する場所です。
- 目的(イスラエルの主張):
自爆攻撃やテロ行為を防ぐため、イスラエルと西岸地区の間に物理的障壁を設ける安全保障措置。 - 実態と批判:
この壁は1967年の「グリーンライン」(停戦ライン)を越えて建設されており、多くのパレスチナ人の生活圏を分断している。国連や国際人権団体はこれを「事実上の領土併合」や「移動の自由の侵害」と見なしている。 - 構造:
一部はフェンス状ですが、都市部では高さ8〜9メートルのコンクリートの壁になっており、Checkpoint300周辺もその典型です。
Checkpoint300は壁を越えるための検問所
イスラエルのヨルダン川西岸地区は周囲をこの分離壁で囲われており、人の移動はもちろん物資の搬入も全てイスラエルにより管理、制限がかけられています。
そんなヨルダン川西岸地区にはパレスチナ人が約300万人ほど生活しており、地区内での仕事が限られている為たくさんのパレスチナ人労働者がこの検問所を毎日通ります。

写真は夕方のCheckpoint300、エルサレムなどで仕事を終えたパレスチナ人労働者が検問所を通り西岸地区に戻ってきている様子です。毎日労働者や通院患者たちが通勤や生活のために、この検問所を行き来しています。
パレスチナのタクシードライバーが検問所出口でイスラエル側から戻ってきた労働者たちを家まで送ろうと待機している。

タクシードライバーと同様、家路につく労働者相手に夕飯の一品を売ろうと、検問所出口にはたくさんの食料品を売る人たちが群がっている。
実際の通過プロセス
僕はベツレヘムを観光を終えエルサレムへ戻るため夕方に検問所を通りました。
エルサレムから帰ってくる大量のパレスチナ人たちとは対照的に、この時間帯にイスラエル側へ向かう人は少なかった。

検問所の第一関門「回転ドア」

たくさんの人が行き来する検問所ですが、入口はこの回転ドア一か所。
大量の人が一度に押し寄せない為のドアと思うのですが、これではとても時間がかかります。
朝の通勤時間帯はとても混雑するようで、皆職場に遅刻しないように早朝4時頃から渋滞するようです。

回転ドアの開閉はイスラエル側に制御されていて、イスラエル側の都合で不意にストップされることもあるという。
「許可証」がなければ通れない
第二関門「セキュリティチェック」
パレスチナ人に限らず検問所を通る全ての人に対して、金属探知機・X線検査・ID確認など、空港レベルのセキュリティチェックを受けます。
観光客のID確認はパスポート、パレスチナ人にはイスラエルからの通行許可証(Permit)が必要です。

イスラエルがパレスチナ人に発行する主な許可証の種類:
- 就労許可証:
西岸地区に住むパレスチナ人が、エルサレムやイスラエル国内で働くために必要。 - 医療目的の許可証:
イスラエル内の病院で治療を受けるために発行。 - 宗教目的の許可証:
重要な宗教行事(ラマダーンやクリスマスなど)の際、聖地(アル・アクサ・モスクや聖墳墓教会など)へのアクセスが許可される。 - 教育・人道目的:
一部の学生やNGO関係者なども対象。
ただし、これらの許可は簡単には発行されません。厳格な審査と不透明な基準、突然の却下も日常茶飯事。チェックポイントでの待ち時間や検査は厳しく、非人道的と批判されることもしばしば。

この時間帯観光客は僕だけで周りは全員パレスチナ人。とてもチェックに時間がかかっていました。
しかし、明らか外見東洋人観光客の僕はパスポートを見せるとあっさり通過させてもらえました。
Checkpointの意味
Checkpoint300に限らずですが、これら検問所はイスラエルからヨルダン川西岸地区へ入るにはほぼノーチェックですが、逆のイスラエルへの進入に対してはとても厳しいチェックが行われています。
バスでエルサレムからベツレヘムへ向かう際、別の検問所を通りましたがノンストップで通過しベツレヘムに到着しました。このCheckpoint300でも仕事終わりのパレスチナ人たちは、ほぼノーチェックでベツレヘム側へ戻ってきています。

イスラエルとしてはパレスチナ人たちのイスラエル側へ入れる事にとても神経を使っている様に思えます。
国際法違反の分離壁
分離壁はイスラエルとパレスチナの国境線の様なもので、この境をまたぐには保安検査やイミグレを通過しないといけません。
分離壁を通れる許可書を持ったパレスチナ人たちはほんの一部で、ほとんどはヨルダン川西岸地区内だけに移動が制限されています。分離壁はパレスチナ人の権利(人権・経済・社会・文化)を侵害しているとして国際司法裁判所が国際法違反として撤去すべきと勧告されています。イスラエルの安全保障とパレスチナの人権保護という2つの価値がぶつかり合い、未だ分離壁は存在しています。
通過時の注意点
- 写真撮影はOKなのか不明ですが、兵士や軍事設備を撮るのは厳禁。
- セキュリティチェックがあるので、パスポートの携帯を忘れずに。
- 長時間の滞在は避け、敬意を持って静かに行動しましょう。
ここは観光地はなく双方の権利がぶつかり合っている場所であるという事を念頭に置いておくべき。

検問所のイスラエル側の出口を出てすぐに、エルサレムの旧市街地ダマスカス門前行きのバスがとまっています。このバスに乗ってエルサレムへ戻りました。
場所はコチラ
分離壁の内側にはパレスチナ人たちの権利を主張した抗議アートがたくさんあります!